プラモデルだけでなく、次の働き手も創る。“魅せる”工場に込めた想い

BANDAI SPIRITS
STORY

プラモデルだけでなく、 次の働き手も創る。 “魅せる”工場に込めた想い

BHC PDII
プラモデル

2025年8月20日

静岡県にあるプラモデル生産工場 バンダイホビーセンター(以下、BHC)の新工場『BANDAI HOBBY CENTER PLAMO DESIGN INDUSTRIAL INSTITUTE(以下、BHC PDII(バンダイホビーセンター ピーディーツー))』が2025年7月24日に稼働開始しました。
新工場のコンセプトは、「魅せる工場」。プラモデルの生産工程を見学できるミュージアムも併設し、静岡から世界へ、モノづくりの魅力を発信する拠点となります。
今回は、前後編で『BHC PDII』の誕生への想いをお伝えします。前編は「魅せる工場」について。ファンの皆さま、従業員を魅了し、愛される工場とは?コンセプト作りから携わったプロジェクトメンバーの想いをお届けします。

ホビーディビジョン ホビーマーケティング部 田口 博丈 (左)/
ホビーディビジョン ホビーマーケティング部 兼 ホビークリエイション部 松橋 幸男 (右)

創造の根幹は、働く人のこだわりと魂

BANDAI SPIRITSのプラモデル事業の歴史は、商品開発における挑戦の歴史です。ファンを魅了し驚きを与えるプラモデルを生み出し続けられるのは、BHCでのたゆまぬ技術開発と新たなコンセプトワークにより、商品クオリティを常に進化・発展させてきた結果です。

これは、土地・建物・最新設備などの資本が揃っていれば実現できるわけではありません。どんなに機械が進化しても、工場で働く人が最も重要です。私たちの持続的な創造の根幹には、プラモデルの企画・開発者と、設計・金型・成形・梱包といった全工程に従事する従業員・関係者のこだわりと魂にあります。

そんなモノづくりにおける価値をBHC PDIIでは伝えたいと考え、生まれたのが「魅せる工場」というコンセプトです。

家族や友人に自慢できる工場へ。追求したのは、人が集まる空間

人が創造の根幹ですから、“働く従業員に魅せる”工場を最初に意識しました。労働人口の減少問題は、BHCも例外ではありません。そこで、より多くの働き手を集められるように工場を「家族や友人に自慢できる場所」にしたいと考えたのです。工場見学者にイキイキと働く従業員や働く環境を見ていただくことで、「ここで働きたい!」と思ってもらえるような場所にすることを、とことん追求しました。

また、工場で働く従業員の制服にもこだわりました。制服デザインでは東京藝大さんとタッグを組み、工場の従業員も企画や製作に参加して決定しました。工場の内装もガンプラのパッケージデザイナーの社員が担当し、画一的な内装ではなく、私たちらしいものになったと自負しています。1階は成形機を主役に、そして3階はホテルのラウンジをイメージし、従業員が仕事に集中できる空間と寛げる空間を創りました。

従業員とファン双方が刺激を受け合う関係

「魅せる工場」と宣言するなら、ファンも魅了する工場でなければいけません。コロナ禍以降は工場見学をあまり開催できておらず、どのようにプラモデルが作られているのかをお見せできない状況でした。BHC PDIIでは工場見学が常時可能になるため、商品製作過程を知り魅力や愛着が沸くことで、より商品の価値を感じてもらえるはずです。さらに「私もここで働きたい」と思ってもらえたなら、こんなに嬉しいことはありません。

また工場の従業員にとっても、新しい制服を着て働いている姿を来場のファンの方に見てもらったり、子ども達から「かっこいい」と言われたりしたら、やる気が出るものです。そのように、従業員とファンの方がお互いに刺激を受け合う関係を作れたら理想的だなと思います。

技術を世界に。成形技師を憧れの職業へ

「魅せる工場」として、世界中から注目を集める工場でありたいと考えています。マスプロダクトであっても、成形技師などの作り手の想いが感じられる特別なものにしたい。そして、ゆくゆくは、ガンプラなどのプラモデルに革新を起こした成形技師が世界中のメディアから注目されて、プロスポーツ選手のように子どもの憧れの職業にランクインするような未来、その成形技師が手掛けた商品自体に付加価値が付くような未来を目指しています。

日本は、世界的に見ても独特のおもしろい文化を持つ国だと思います。日本人の生真面目な性格や会社への帰属意識などは世界的に見たら稀です。その国民性が、1つの技術を深く研ぎ澄ます製造業とマッチしたことで、日本はモノづくり大国と呼ばれるようになったはずです。そんな点を世界に発信していけたら、おもしろい未来が待っているのではないでしょうか。

新工場は、次のBANDAI SPIRITSを創る“研究所”

BHC PDIIは従来の工場と異なり、生産体制も大きく変わります。これまでは、原料を入荷→成形機まで運搬→成形条件の調整→成形→検品→箱詰め→輸送……と、工程別で分担していました。

BHC PDIIでは工程別の生産方式をやめて、シームレスな1つの生産方式に変更。物の移動の大部分を機械が行い、検品は検査課の人間が担当、そして成形技師は主に技量が問われる成形条件の調整部分を担うなど、機能別の役割設定へと切り替えました。従業員それぞれが得意を活かせる環境へと進化させたのです。

そうすることで、従業員一人ひとりが専門性を深めることができ、これまで以上に安定した品質を常に担保できるようになると予想しています。ゆくゆくは、今回の成功事例やナレッジを横展開し、さらに生産量を上げていくことを目指しています。そのような意味合いで、今回の新工場にはINSTITUTE(研究所)という名称がついているのです。

プラモデルで、世界中のモノづくり人材を生み出す

日本の主幹産業だったモノづくり産業は、現在、人手不足が問題になっています。しかし、「幼い頃にプラモデルを作ってモノづくりの楽しさに目覚め、大人になり、モノづくり産業を支えている」そんな人は少なからずいるはずです。このようなプラモデルきっかけでモノづくりに従事する人がもっと増えてほしいのです。

現在、プラモデルの出荷数は日本国内と海外で半々。プラモデルは、世界のモノづくり産業を支える人材を生み出す可能性を秘めています。BHC PDIIがフラッグシップとなって、より多くの人がモノづくりを楽しむ世界を作り出していきたいですね。

WHAT'S YOUR “SPIRITS” 仕事における「魂」

「いかに本質を掴むか」です。多様化が進む現代においては、物事が成立している本質を考え抜いて、戦略を実行することが大事だと考えています。最初に本質が掴めていればブレ幅は少ないので、できるだけ早く大きな1歩を踏み出すようにしています。

ホビーディビジョン ホビーマーケティング部 兼 ホビークリエイション部 松橋 幸男

「種を植えること」です。「工場とプラモデルのイメージを変える」ことは、来場者数などの数値では測れず、すぐに成果が出るわけでもありません。それでも10年後、20年後に大きな花が咲き実になることを願って、どう種を植えるかにこだわり、ミュージアムにひたむきに向き合っています。

ホビーディビジョン ホビーマーケティング部 田口 博丈

所属部署・内容は取材当時(2025年6月)のものです。

©創通・サンライズ

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