匠×TAKUMI Cross Talk

BANDAI SPIRITS × 日清食品

期待を超える創造に挑む。
そのためには、情熱を持ってチャレンジし続けることはもちろん、異分野から学ぶ姿勢も欠かせません。
「匠×TAKUMI Cross Talk」は、異なる業界や職種で活躍する「匠」の両者が語り合うことで新たな発見や発想、気づきを得る企画です。

今回は『BEST HIT CHRONICLE1/1 カップヌードル』の発売にあたってご協力いただいた日清食品マーケティング部の白澤勉氏をお招きし、BANDAI SPIRITS ホビー事業部の企画担当 寺島塁とカップヌードルプラモデルの開発経緯や互いの仕事への取り組み方などを語り合いました。
二人の「匠」が考える、モノづくりのアイデア、そして哲学とは――。

Profile

寺島 塁

寺島 塁 Rui Terashima

株式会社バンダイスピリッツ
ホビー事業部 ニューホビーチーム

2016年入社。
プラモデルの営業・プロモーションを経て入社3年目より商品企画を担当。
「世の中にない、全く新しいプラモデルを作る」というミッションの元、日々チャレンジ的な商品開発を遂行。
これまでにニッパーなどの工具シリーズや、『BEST HIT CHRONICLE』を担当。
趣味はフットサルとテレビゲーム。

白澤 勉

白澤 勉 Tsutomu Shirasawa

日清食品株式会社
マーケティング部 第一グループ ブランドマネージャー

1997年入社。
宣伝部、経営戦略室などを経て現在はマーケティング部第一グループにて「カップヌードル」のブランドマネージャーを務める。
日課は自社商品の試食、毎朝5kmのランニング。

匠×TAKUMI Cross Talk

“常識”から外れた新しい取り組み

寺島
今日はお越しいただきありがとうございます。お会いするのは『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル』 の最終打ち合わせ以来ですね。
白澤
そうですね。リリース発表後にも各方面から反響があり、ようやく発売を迎えられて安心しました。
寺島
『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル』は、昭和・平成の世に出た各企業のヒットプロダクトを最新技術でキット化する『BEST HIT CHRONICLE』ブランド企画として令和元年にスタートしました。今回は約半世紀にわたって世界中で愛されている食品のレジェンドである「カップヌードル」をプラモデル化することで、プラモデルの魅力をより多くの方に伝えたいと、日清食品で「カップヌードル」のブランドマネージャーをされている白澤さんにご提案したところからスタートしています。
新感覚のプラモデル『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル
新感覚のプラモデル『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル』
白澤
お話を伺う中で、「カップヌードル」が情報発信していく選択肢の一つとして、プラモデル化は面白いアイデアだなと感じました。我々は「カップヌードル」という食品を扱っている一方、エンターテインメントの部分も同時に追及しているので、ブランドに対する考え方はBANDAI SPIRITSさんと似ていると感じました。

「カップヌードル」の公式Twitterでは、「カップヌードル」にまつわるユニークなコンテンツを投稿しているのですが、実は数年前に「あなたは3分で“作れる”か?」というコメントとともに、「カップヌードル」のカップや具がプラモデルとなっている合成の画像を制作してツイートしたことがあるんです。当時、そのツイートはかなり話題になったこともあり、ネタとしての面白さは保証されていると思っていました。
2017年に日清食品が「カップヌードル」公式Twitterに投稿した画像
2017年に日清食品が「カップヌードル」公式Twitterに投稿した画像
寺島
僕はそのことを知らずに企画していたのでかなり驚きましたね。リリース後にもユーザーから「あのネタが実現した!」といった反響もあって、発売前から背中を押される要素がたくさんありました。
白澤
その反面、「一般の方に喜んでもらえるのか?」「売れるのか?」と、率直な疑問がわいたことも事実です。社内ではどうだったんですか。
新感覚のプラモデル『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル
新感覚のプラモデル『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル』
2017年に日清食品が「カップヌードル」公式Twitterに投稿した画像
2017年に日清食品が「カップヌードル」公式Twitterに投稿した画像

プラモデルの開発過程で気づいた
「カップヌードル」の“ユーザー視点”

寺島
正直、社内に提案したときも同じような疑問の声がありました。ただ、その反応こそが常識から外れた新しい取り組みである証拠だという自負もあり、この企画の持つ可能性に私自身がワクワクしていたので自信を持って進めていきました。

実際に開発していく過程では、「カップヌードル」がいかにユーザー視点で作られたプロダクトなのかということに改めて気づき、発見の連続でした。我々もユーザー視点でものづくりをやっていますが、食品という分野で、それも「世紀の発明」といわれている「カップヌードル」のユーザー視点のモノづくりはハンパじゃない。本当に尊敬すべきものでした。
匠×TAKUMI Cross Talk
白澤
「カップヌードル」特有の技術である「中間保持構造」や
疎密麺塊構造そみつめんかいこうぞう疎密麺塊構造(そみつめんかいこうぞう)」なども試作の段階で忠実に再現していただけたので、あらためてプラモデルの世界観やクオリティに感心させられました。我々にとっても刺激になり、「もっとこうした方がリアルになりますよ」と何点か修正をお願いしましたよね。
匠×TAKUMI Cross Talk
「中間保持構造」をプラモデルで再現
麺がカップの底から浮いていることで輸送時の振動から守られ、壊れにくくなるための「カップヌードル」ならではの工夫「中間保持構造」をプラモデルで再現
「疎密麺塊構造」を再現するための麺の試作。
「疎密麺塊構造」を再現するための麺の試作。本物の「カップヌードル」では、上部の密度が高く、下部の密度が低いこの構造により、お湯を注いだ麺が、自然とほぐれて均等に湯戻しすることができる。
プラモデルの麺の部分の組み立てイメージ
プラモデルの麺の部分の組み立てイメージ
匠×TAKUMI Cross Talk
寺島
その中でも一番苦労したのはカップの構造です。カップ型のパーツにぐるっとシールを貼れば簡単にパッケージ部分が完成しますが、それではプラモデルを組み立てる醍醐味を楽しんでもらえない。慣れ親しんだ「カップヌードル」の秀逸なパッケージデザインを手触りとしても感じてほしいという思いから、カップも徹底的にプラモデル化することを決めていました。

ただ、本来薄いカップをプラモデルにしてパーツ分けすると、複雑な構造になり、厚みが出てリアリティから離れてしまう。それを、より本物のように再現しつつ構造体として成立させ、量産可能なクオリティにもっていくところに非常に頭を使いました。

試作品

完成品

カップの内側に厚みがあった初期の試作(写真左)と、厚みを無くした完成品のプラモデル(写真右)
寺島
「プラモデルだから仕方ない」と再現性を妥協してしまうと、『BEST HIT CHRONICLE』の最大の魅力を削いでしまうことになる。開発チームである、企画担当、設計担当、金型担当、生産担当が部屋にこもって、みんなが「カップヌードル」片手にひたすら考え、活路を見出した時は全員で大喜びしました。
プラモデルの組み立てイメージ
プラモデルの組み立てイメージ

匠×TAKUMI Cross Talk

技術の限界に挑みたい

白澤
こちらが指摘していない部分も、寺島さんの方から「ここはもっと改善したいので、次回までの宿題にさせてください」とおっしゃられたり、お互いのこだわりがどんどん高まっていきましたね。
寺島
だんだんと少しの妥協も許せなくなってくるんですよね(笑)。私だけではなく、工場の開発チームからもどんどん改良にあたっての意見が出てきて、「プラモデルの技術の中での限界に挑みたい」という思いで、これまでバンダイが追求してきたプラモデルの生産技術の知恵とノウハウを結集した表現になったと思います。
白澤
当社の創業者は「まず理想的な商品を考えてから、生産設備を用意しなさい。生産しやすい商品を開発目標にしてはいけない」という言葉を遺しているのですが、「コストや手間を度外視してでも、まずは考えて追及し、実現させよう」という執念をもって、商品作りをやり続けている会社なので、その意味ではBANDAI SPIRITSさんのこだわりぬく姿勢にシンパシーを感じました。
寺島
日清食品さんのおかげでプロダクトとして手ごたえのあるものになり、プロモーションとしても想像を上回る広がりを見せています。『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル』を通して、プラモデルの魅力、そして「カップヌードル」の魅力を伝えられたら最高に嬉しいですね。

BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル

BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル

『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル』(2,420 円・税 10%込/2,200 円・税抜)を、「カップヌードル」の誕生日である 2020年9月18日(金)に日本国内で発売。海外でも順次発売予定。(写真左の中央は本物の「カップヌードル」)
「カップヌードル」のふた止めシールは、日清食品さんからご提供いただいた本物
「カップヌードル」のふた止めシールは、日清食品がBANDAI SPIRITSへ提供した本物
ふた止めシールで『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル』のふたを止めている様子。
ふた止めシールで『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル』のふたを止めている様子。

「社内競争に勝てないものが、
市場の競争に勝てるわけがない。」という考え方

寺島
9月18日は「カップヌードル」の49歳の誕生日ですね、おめでとうございます!
半世紀もの間ブランドを維持するのは非常に大変であり、だからこそブランディングを担っている白澤さんの責任の大きさは計り知れません。ブランドマネージャー制というのは当社にはない制度なので、改めてどういった役割なのか教えていただけますか。
匠×TAKUMI Cross Talk
匠×TAKUMI Cross Talk
白澤
弊社にはいくつもブランドがあり、ブランドごとに縦割りのグループで管理しています。ブランドマネージャーは、担当するブランドカンパニーの社長としての権限と責任を持ち、経営的な視点を持ちながら進めていきます。弊社には「社内競争に勝てないものが、市場の競争に勝てるわけがない。」といった考えがあるので、その競争構造の中で担当するブランドを磨き、強化していくことが私の使命なんです。
寺島
そのような風土があるからこそ、常に業界のトップを走り続けているのですね。
白澤
プラモデルの新製品における開発のプロセスはどうですか?
寺島
プラモデルの題材を決めるところからスタートし、プレゼンを経てメディア展開などを含めて話し合いをしていきます。商品開発は主に静岡にある工場のバンダイホビーセンターで行っています。
プラモデルはパーツから組み立てていくものですが、まずは完成イメージから作り上げていくのがポイントで、『BEST HIT CHRONICLE 1/1 カップヌードル』だったら外観イメージの設計から始まりました。その後、プラモデルとしてのパーツ分割の設計に移って、ここでパーツの数や組み立て工程が決まります。ここから金型を掘って成形して生産していくという流れですね。開発期間は約10カ月ほどでしょうか。

私自身はかなり頻繁にバンダイホビーセンターに足を運んで、現物を見ながら作り上げることを意識していました。
日清食品さんの新商品開発のプロセスはどのようなものですか。
白澤
弊社では日ごろの情報収集で得たアイデアやさまざまなデータを基に商品開発にとりかかります。研究所の開発担当者と試作品をやり取りしながら、発売5カ月前に最終デザイン、スペックを決定し、発売が決まります。その後は、商談やプロモーションの準備、生産の準備を整えて発売日を迎えるという流れです。開発期間は同じくらいですね。

ひとつの商品を発売するにあたっては、国内にある複数の工場で一気に生産しますから、原材料や資材が大量に必要ですし、各部署との調整も多岐にわたります。

1つのブランドが長く愛されるために、大切にすべきこととは

寺島
一つのブランドが長く愛されるために、やるべきことや大切にすべきことは何でしょうか。
白澤
“変えるところ”と“変えないところ”を決めておくことでしょうか。世の中の商品で例えると、家電のように技術革新されていくことが良しとされるものがある一方、食については、家庭の味や思い出とともに記憶に残っている味など、人間の本質的な部分として絶対に守っていかなくてはいけないものがあると思います。

「カップヌードル」に関しては、ユーザーが期待している味から逸れていくような変え方は絶対にしませんし、高めていく必要がある場合、ユーザーが気づかないように変えています。
寺島
昔から変わらない懐かしい味だと思っていても、実はかなり違っているなんていうこともあるんですか?
白澤
商品によってはそういうものもあります。ほんの少しずつ変化させていくので、日々食べているときには気づかなくて、食べ比べると数年前のものとの違いに気づくといった商品もあります。ロングセラーの商品は、磨き続けないと絶対飽きられてしまうので、安心感、新しさ、懐かしさ、カッコよさ、など様々な側面を持たせようと常に試行錯誤しています。
「カップヌードル」のような定番商品であっても、時代に合わせて常に高みを目指そうと頑張っています。
匠×TAKUMI Cross Talk
匠×TAKUMI Cross Talk
寺島
1つのプロダクトで長く、しかも各年代のユーザーに愛されるというのは本当にすごいことだと思います。
白澤
サスティナブルなブランドであるためにも積極的に変化を続けていて、例えば容器は2008年に発泡スチロール製から紙製の「ECOカップ」に変更しました。ただ、それまで親しまれた発泡スチロール製カップの手触りは残したい。だから発泡スチロールのようなザラッとしたコーディングをあえて施しました。また、紙製のカップは口に触れる部分がロールしているのが普通ですが、わざと角を立てて四角くし、口がカップに触れた時の感覚も変わらないようにしています。一食百数十円の「カップヌードル」にそこまでするか?と驚かれますし、実際コストも手間もかかるのですが、こうした無駄ともいえるほどの細部へのこだわりこそが日清食品らしさであり、企業文化なんです。

“過程”をエンターテインメントに

寺島
守る部分と、変化させる部分を切り分けて、ロングセラーとしての今があるのだなと改めて感銘をうけました。プロモーションについても伺いたいのですが、斬新なCMをはじめ、エンターテインメント性あふれる発想はどこから来るのでしょうか。
U.F.O.専用キャベツ落としデバイス
革命的かつ世界一スタイリッシュなU.F.O.専用キャベツ落としデバイス。湯切りしたあと、ゴムの弾性を活用して、ふたの表をバンバンとたたいて、裏のキャベツを落とす。ふた裏についた微細なキャベツ81%を落とすことができる。
白澤
ユニークなもの、目立つものを作ろうということを常に考えています。
実は私自身、カップ焼そば「日清焼そばU.F.O.」の担当をしていた2018年に、「キャベバンバン」という、U.F.O.のふたの裏側に張り付いたキャベツを落とす器具のアイデアを出し、試作したことがあります。もともと、湯切り後のふたの裏側にキャベツが張り付いてしまうことに問題意識を持っていたんです。実際に調べてみると、ふたの裏側に付着するキャベツの平均枚数は4.8枚で、「日清焼そばU.F.O.」の年間販売食数をかけると、捨てられてしまうキャベツの推定量は年間4.17トンにも上ることがわかりました。そのあたりを大真面目に訴えながらユーザーが一緒になって面白がってくれたらいいなと企画したのが「キャベバンバン」でした。

このような遊び心を持ちながらも、食品である以上、安全面では絶対にリスクを残さないよう徹底しています。
“面白がる世界”と“食べて安心する世界”は別ですから。
U.F.O.専用キャベツ落としデバイス
革命的かつ世界一スタイリッシュなU.F.O.専用キャベツ落としデバイス。湯切りしたあと、ゴムの弾性を活用して、ふたの表をバンバンとたたいて、裏のキャベツを落とす。ふた裏についた微細なキャベツ81%を落とすことができる。
寺島
お腹を満たすことが目的の製品で、食べるまでの過程をエンターテインメントとして捉える。その発想はものすごく共感できます。プラモデルは完成体が欲しくて手にするものですが、そこには組み立てるという工程があり、我々もそこをいかに楽しんでいただくか、面白くするかを常日頃考えているので、分野は違えど同じ考えを持つ日清食品さんとコラボレーションできたことが改めて光栄なことだと感じています。
白澤
「カップヌードル」は2021年9月に発売50周年を迎えます。そこに向けて様々なプロモーションを展開していきたいですし、今回のBANDAI SPIRITSさんとのコラボレーションのように、食以外のところでも楽しんでいただけるような取り組みもしていきたいですね。
寺島
今回のコラボレーションを通して学んだ日清食品さんのアイデアやこだわり抜いている部分を自分自身としてしっかり吸収して今後の企画に踏襲していきたいです。そして我々なりのエンターテインメント性でプラモデルを作ることの楽しさをさらに進化させていきます!
白澤
お互いに切磋琢磨していきましょう。
寺島
本日はありがとうございました!
3分では作れない新感覚 プラモデルカップヌードル誕生! 日清食品 特設サイトはこちら